みどころ

心温まる家族愛

親子
アシュバドルと父親ボラムサキャ。放牧を営むボラムサキャはアシュバドルの憧れの存在だ。アシュバドルも将来、父親のようになりたいと思っている。
家族全員IMG_2326
家族みんなが手を携えて懸命に生きる姿は、古き良き時代の日本を彷彿させ、どこか懐かしい感じがする。
この映画を見た人は、きっとこの一家の虜になることだろう。

天才兄弟

アシュとプナム
どんな名子役でもこれほどの魅力的な演技はできないであろう。情報発信をするなかで、実は封切り前から多くの大人たちがこの兄弟の虜になっている。
水牛とアシュバドル4M0A0572
天衣無縫で野生児のようなアシュバドル
プナム
天真爛漫で天使のような妹プナム

壮大なヒマラヤの大自然と空撮

ヒマラヤ2
聖なる山、ボーダーヒマラヤ。
ボーダーはブッダを意味する
ヒマラヤ3
撮影は空撮を駆使して行った。

ドローンが広げた映像世界

ハニーハンター
断崖絶壁で行われるハニーハンティングの撮影では、工夫をこらした。
撮影スタッフ石川と助手の二人にもかかわらず、編集された映像をあらためて見直すと、高所からメインカメラ。別角度からの望遠レンズによるサブ。そしてドローンによるさまざまな角度からの空撮、さらには、フットワークを生かして広角レンズで接近して撮った映像。
それらを組み合わせることにより、あたかも4カメで撮ったようなバリエーションのある映像が成立した。
知らない人が観たら、20人以上の大部隊で撮った映像に見えることだろう。

巧みなカメラワーク

写真界では自他共に認める第一人者である石川だが、今回はこれがムービー初挑戦。あえて写真的な撮り方にこだわり、新境地に挑んだ。ズームやパンを拒否し、フィックスの研ぎ澄まされた構図からは、まるで写真のように映像そのものが語りかけてくる。

お父さんの手写真
アシュバドル一家の密着撮影は、日常生活をともにしながら常に手元にシネマカメラを置いて行われた。
どんなときもカメラを片時も手放すことはなかった。ベトナム戦争時代、沢田教一ら戦場カメラマンはごはんを食べるときも常に首からカメラを下げており、スープでカメラが濡れたという逸話があるが、まさにそんな感じだ。
ガトゥダンス
そうして生まれた映像では、プナムやアシュバドルたちがまるで俳優のようにスクリーンの中で自然な「演技」をしている。
常に密着していた石川は「さながら透明人間のようになって彼らの日常を切り取ることができた。」という。これは大人数でロケをしていいては決して生まれることのない、個人目線の、正にスティール取材の感覚だ。

ドラマ

映画の第2章の主人公は医者のいない村で唯一の看護師ヤムクマリ。
ラプラックの母とも呼ばれる彼女はこれまで献身的に村に尽くしてきた。そんな彼女の夫が地震で亡くなってしまった。
信仰心の篤いヤムクマリですら、「神も仏もあるものか」と天を見つめた。

ヤムクマリ涙
しかし、地震から8ヶ月経って行われた告別の儀式を通して、彼女の考え方がまた変化していく。
映画ではまるで大女優を思わせる風格と表現力のある彼女の内面を追うことにより、ふだんは知ることのできないネパールの人々の心のひだまで捉えている。
ヤムクマリ

神秘の世界

ヒマラヤの懐、ラプラックではチベット古来の宗教、ボン教を信仰する。
人々の信仰心は篤い。そして不思議なことにハニーハンティングでは、大量のヒマラヤ蜂に囲まれながら、マントラを唱えるハンターが刺されることはなかった。ここでは神様の存在を疑う者はだれもいない。

ガトゥー_M0A5711
ラプラックで最も重要な儀式、ガトゥの舞では、汚れなき少女たちが、グルたちのマントラでトランス状態に陥り、目をつぶったまま踊り続ける。その姿は正に神秘の舞としか表現しようがない。
ガトゥ見守る少女
そしてこのガトゥダンスが村人を苦しみから救い、魂を解放する儀式だ。
毎年、ブッダの生誕歳に合わせ、そのクライマックスが行われる。

村人たちの葛藤

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村の長老 カルマヤ
『祖先の魂が宿る聖なる壺は移動できる。しかし、神様は移動できない』と強い口調で語った。

せっかく復興途上であった村だが、地震のため地盤が破壊され、地滑りのリスクが高まっていた。
政府によりラプラック村はレッドゾーンに指定され、人々は村を捨てて移住することを求められた。しかし信仰心の篤い長老たちはそれに反対する。土地との結びつきが強いボン教では、神々を移動することはできない。
土地を捨てることは神様を置き去りにすることになるのだ。

長老
ガトゥーの舞を司るグル。
映画では、復興から1年を超えても継続取材を続け、村人たちの難しい判断を追った。
迫られたのは神か命の安全か、究極の選択だった。

友情

僕とアシュburogu-
石川が初めて村を訪れたときの約束、必ず世界に伝えること、そして戻ってくること。通い続け、報道と映画を通してそれを達成することができた。村も問題はあるとはいえ、復興は進んでいた。そんな二人の間で友情は深まっていった。
アシュボン1
アシュボン4
映画の中で石川が登場することはほとんどないが、カメラを通して伝わるそのまなざしや、エンドロールでの動画で二人の間に芽生えた友情を感じることができる。
アシュボン3
復興したラプラックの村を見下ろす二人

音楽

バンスリ

Binod_2
インドやネパールの伝統楽器として名高いバンスリ。
竹でできた横笛だが、全編通して、スペイン在住のネパール人、ビナード・カトゥワルが音楽を手掛けた。
当初は雄大な大自然を表現するにはオーケストラしかないと考えていた石川だが、ビナードは笛一本でその考えを吹き飛ばした。豊富なバリエーションで、全編にわたり流れる笛の音は、人々を魅了してやまないであろう。
音楽だけ聴いていても、その夢幻の世界に酔いしれることだろう。

*はなおと*

はなおと
岩手出身のアコースティックユニット。
東北の心を歌う*はなおと*はネパール大地震からの復興をテーマにしたこの映画のエンドロールを歌う。
単に美しいだけの歌声ではなく、そこに込められた気持ちが魂を揺さぶる。
今回、あらたに詩をアレンジ、世界公開を目指すこの映画のために「んだなはん」の英語バージョンをレコーディングしてくれた。