写真界では自他共に認める第一人者である石川だが、今回はこれがムービー初挑戦。あえて写真的な撮り方にこだわり、新境地に挑んだ。ズームやパンを拒否し、フィックスの研ぎ澄まされた構図からは、まるで写真のように映像そのものが語りかけてくる。
映画の第2章の主人公は医者のいない村で唯一の看護師ヤムクマリ。
ラプラックの母とも呼ばれる彼女はこれまで献身的に村に尽くしてきた。そんな彼女の夫が地震で亡くなってしまった。
信仰心の篤いヤムクマリですら、「神も仏もあるものか」と天を見つめた。
ヒマラヤの懐、ラプラックではチベット古来の宗教、ボン教を信仰する。
人々の信仰心は篤い。そして不思議なことにハニーハンティングでは、大量のヒマラヤ蜂に囲まれながら、マントラを唱えるハンターが刺されることはなかった。ここでは神様の存在を疑う者はだれもいない。
せっかく復興途上であった村だが、地震のため地盤が破壊され、地滑りのリスクが高まっていた。
政府によりラプラック村はレッドゾーンに指定され、人々は村を捨てて移住することを求められた。しかし信仰心の篤い長老たちはそれに反対する。土地との結びつきが強いボン教では、神々を移動することはできない。
土地を捨てることは神様を置き去りにすることになるのだ。