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» 映画監督・石川梵が語る次回作「くじらびと」(世界でいちばん美しい海の村)

石川を惹きつけた「たいせつなもの」とは

銛一本で巨大な鯨を突く。そんな信じられない漁を実際に行う人たちがいます。
インドネシア、レンバタ島、ラマレラ村の鯨捕りたち。
私は、そんな勇壮な鯨捕りたちの世界に魅せられて、30代のほとんどを費やして撮影しました。

家族、コミュニティ

鯨漁は命がけで、ときには反撃する鯨に船が壊されたり、船ごと海の中に引き込まれたり、また、船上にいても鯨に襲われることがあります。
そんな命がけの漁は、まるでタイムマシンで江戸時代の鯨の村に行ったかのようで、撮影していてなんとも興奮しました。
しかし、何年も通い続けると村の別の側面にも気づくようになりました。
鯨が獲れると、寡婦や生活に困っている女性たちにはとても優遇された条件で鯨が分けられます。
引退した漁師は船造りや椰子の葉で編む帆づくりに関わります。そうすることによって船を降りても分け前がもらえるようになります。
そう社会保障のような仕組みが鯨を中心にできあがっていたのです。
また漁期が始まる前に小高い山に住む先住民は鯨乞いの儀式を行います。さまざまな精霊に呼びかけながら鯨を呼びます。鯨が獲れるとラマレラの人々は先住民の長に鯨の分け前を差し出します。
鯨を呼んでくれたお礼です。先住民と、もともと漂流民だったラマレラの民の関係がこうした取引を通じて円滑になるのです。
もうひとつ、私の心を打ったのは、勇壮な鯨漁を支える女たちの姿。鯨肉を頭に乗せて女たちは徒歩で数日かけて山を登り、山の民と物々交換をしていました。帰路、米や野菜、日用品など30キロを超える荷物を運ぶ女たちは文字どおり縁の下の力持ちでした。お金ではなく、物々交換というのが、なんとも素朴です。

自然と共に暮らし、祈りを大切にする人々

そうそう、こんな言い伝えがありました。ラマレラの民はナガスクジラの背中に乗ってこの島にたどりついたという伝承です。そのため、今でもラマレラではマッコウクジラは獲ってもナガスクジラは獲りません。

そんなラマレラの民は、鯨の頭骨を必ず海に返します。頭には魂が宿っていると信じているからです。
まるでおとぎ話のようですが、全て事実です。そんなラマレラ村を、私は「世界でいちばん美しい海の村」と呼んでいます。

石川が見据えるもの

ヒマラヤの「世界でいちばん美しい村」を撮り終えたあと、次は何を撮るのですか、とよく聞かれるのですが、もう答えはおわかりだと思います。
なつかしい日本の原風景を求める旅、悠久の時の中で人々を見つめる私のライフワーク、次のテーマはそう、この鯨の村なのです。

今度のプロジェクトはかなり本格的なものです。そして支援そのものを目的にするのではなく、この村の素晴らしさを日本に、世界へ伝えるものです。また大きな問題提議もします。
クラウドファンディングを始めますが、そんな私の仕事に興味をもたれた方、いっしょに夢を見たい方、ぜひ、このリンク先を見てください。

「世界でいちばん美しい海の村」クラウドファンディング